後日譚 ― ろくろと清五郎のその後

ろくろ

1. さよとの別れの後、大宮に向かう途中行き倒れてしまった。ろくろも身体的ダメージが大きかったのだ。そこへ通り掛かった旅僧に介抱されて瀕死の状況から回復する。ろくろは旅僧に感謝を伝えるとともにすぐに大宮に向かおうとする。しかし事情を聞いた僧侶から止められる。それはろくろが大宮で約束を果たした後に自殺すると確信したからだ。「その娘のためにも遺族のためにも、そなたはわしに使えて無明の闇を払わなければならない。」そう言ってろくろを引き留めた。そうしてろくろは旅僧に従って旅に出ることになった。

2. ろくろは大宮宿で「さよ」の身内の情報が得られなければ板橋の美濃屋の女将に会いに行くつもりでいた。「まぁ良い。もうここを去るので、ついでに教えてやろう。」というセリフはそういう意味がある。

3. 清五郎と会った後、ろくろは石神村に行った。そこで村人が娘のために御堂を建てたことを知った。清五郎から姉妹が女郎だと知ったろくろは「帰命頂礼 女郎尊」と紙に書いて御堂の扉に挟んだ。

4. ろくろは石神村から大宮に戻り清五郎に御堂のことを告げた後、板橋の美濃屋の女将に会い、事情を話して深謝し女将と和解した。その後再び旅に出る。諸国の無縁仏を供養するためである。

ろくろの背景シルエット

清五郎

1. 清五郎はろくろとあった後絶望と悲嘆に打ちひしがれていたが、意外にもろくろがすぐに大宮に戻ってきて、石神村に娘を祀った御堂があることを告げた。数日後、清五郎は勇気を出して石神村に向かう。御堂にやってきた清五郎はそこで死者との対話を通じて心の底から泣くことが出来た。それは絶望と孤独からくるものではなく哀悼と惜別の涙であった。悲劇ではあるが清五郎はこれで心を取り戻したのである。

2. その後清五郎は小松善右衛門が勧める縁談を断り、板橋で幾が世話になった富農の子供たちが成長した後、その中から取り婿、取り嫁を迎え木曾屋を継がせた。僅かながら姉妹の記憶を留める子供等を迎え入れることで、木曾屋に姉妹の魂を残したのだった。後にこの子らが高台橋に千歳のために地蔵を建てることになる。

清五郎の背景シルエット

原作の補足のために

作者